その言葉に二の句が出ず、視線を宙に泳がせていると
「…あ、来た。」
樹の掛け声と共に
勢いよく開けられた扉。
バタンッッッ!と、まるで壊れるんじゃないかってくらいの勢いで。
そして、反射的に顔を上げれば、懐かしいその姿。
「紅―――」
「バカっ!!!」
でも、名前を呼ぼうとした俺にまず浴びせられた第一声はそれだった。
あぁ!?
…ちょっと待て。
バカって何だよ、バカって!!
隣に居る樹も「あちゃ~…」と頭を抱える。
さすがの俺も
その言葉に眠ってた怒りが爆発。
…スイッチ入りまーす。
「てめぇ、さっき目ぇ覚めたばっかりの人間にバカはねぇだろうが!」
「だってバカじゃない!まだ赤なのに横断歩道渡ってトラックに轢かれるなんて!」
「あれはお前と言い合ってムカムカしてたんだっつーの!お前のせいだ、バーカ!」
「うるさいっ!アホ颯!」
いつの間にやら樹は病室を出ていってしまったらしい。
二人分の鼻息が、夜の静かな病室に響き渡る。
すると、急に大人しくなった紅葉から鼻をすする音が聞こえた。
…ん?
あ、あれれ?
もしかして………。