「ってぇ……、」
「当たり前だよ、トラックに轢かれたんだから。」
樹と俺、二人になった病室に静かな時間が流れる。
どうやら、俺はあれから2週間程寝たままだったらしい。
どうりで思うように体が動かない訳だ。頭もぼーっとするし。
例えるなら、休みの日に寝すぎて頭の中がぼんやりするような、そんな感じ。
そう言えば、トラックに跳ねられ、瀕死だった俺がここまで回復出来たのは奇跡だ、とさっき先生が言っていた。
そう言われても
いまいちピンと来ない。
だって俺は眠っていた2週間弱、普通に生活していたんだから。
「…あのさ、樹…。」
「ん?」
「……いや、その~、」
紅葉の事を聞きたいのに
なかなか切り出せない小心者の俺。
こっちの世界にも居ない、と言われたら、それこそ立ち直れそうにない。
結局、「何でもない」と適当にごまかすと、樹は見透かしたように笑って言った。
「由井ならもうすぐ来るよ。」
「え?」
「お前、由井に感謝しろよ。眠ったままのお前をずっと看病してたの由井なんだから。」
……紅葉が、俺を?