――ハロウィン。
その言葉が、俺の記憶を溢れ出させた。
『本当に知らないの?』
『ハロウィンよ!』
足が止まる。
呼吸が速まる。
「…颯?どうした?」
突然黙り込んだ俺に気付き、樹が顔をしかめた。
俺はアンティークショップの外に飾られたカボチャのランプを見据え、震える声を絞り出す。
「……樹。」
「何?」
「ハロウィンで使う言葉、あったよな?」
「…言葉?」
「ほら、トリック何とかってやつだよ!!!」
その瞬間、掴み掛かった俺に樹は目を丸くして、身をたじろいだ。
「ど、どうしたんだよ急に、」
「いーから!何だった!?」
「俺も知らないって!」
ガックリと力が抜けていく。
ようやく答えらしき答えが見つかるような気がしたのに…。
すると、少し先で聞こえた声。
「トリック オア トリート、ですよ。」
弾かれるように振り返れば、そこに居たのはさっきティッシュをくれたお姉さんだった。
「お菓子をくれなきゃイタズラするぞ、って意味みたい。」
「トリック オア…、」
「トリート、です。」