その名前が
俺の胸の奥を、容赦なく締め付けた。
「…あ~、」
口から零れるのは
曖昧な返事と戸惑い。
けれど悟られないよう、努めて冷静に答える。
「それは前にも言っただろ?寝ぼけてただけだって。」
「それにしては真剣だったじゃん。」
「だから、寝ぼけてたから覚えてねーよ。」
ふーん、とどこか納得出来てない顔をする樹に
俺はこれ以上、この話を長引かせない為に違う話題へ切り換えた。
…樹の言う通り
最近の俺はおかしいと、自分でも思う。
何だか、得体の知れないモノが重く圧し掛かって。
それでいて
心にポッカリと穴が開いたような…
とにかく、何かおかしいのだ。
例えて言うなら
何かが足りない感じというか
欠けてるっつーか。
…原因はわかってる。
だけど正直、認めたくなかった。
離れてしまってから
失ってしまってから、気が付くなんて。
認めたく、なかったんだ。