「……はぁ。」

真っ青な空と向き合うと
俺のデカイ溜め息は、あっという間に風に吹かれて消えた。


理由はわからない。

でも、どうしても教室に戻る気にはなれなかった。



そこで気晴らしに校内をふらついていると、いつもは閉まっているはずの屋上の施錠が外れていて。

迷う事なく踏み入れた初めての屋上は、思ったよりも景色が悪かったと知った。



「さっみ…、」

貸し切りの屋上のど真ん中に寝そべると、吹き付ける風の冷たさがひしひしと伝わってくる。

それでも、教室に戻る気はさらさらない。


何も考えずに、ちぎれ雲の流れてゆく様をぼけっと見つめた。


だけどしばらくすると
それにも飽きて、眠気を感じた俺は

本能に任せ、ゆっくり瞼を閉じた。




瞼の奥に焼きつく、最後に見た紅葉の顔。


最後の最後まで
アイツはやっぱり怒ってて。

思えば、紅葉とのやりとりで俺の一日は始まり、そして終わっていた気がする。


だからなのか。

どうも最近調子が上がらない。



あの金切声を聞かなきゃ、俺の一日は始まりもしなければ終わりもないのだ。



…ったく。


「…どこ、行ったんだよクソ紅葉…。」


そう呟いた空に
俺の虚しい独り言は、雲に溶けていった。