月子は「横綱」に入って行った。
修二はもうカウンターに座っていた。
「よっ!」
修二はニヤッと照れ笑い。
目の前には、徳利にお猪口、刺身があった。
いい歳しながら…二人の気持ちは中高生。
互いに酌し合いながら…徳利は二人を繋ぐ、恋の小道具となった。
「5人兄弟の長男って、大変よね。子供ん時って、下の面倒とかみなくちゃいけないし…ねぇ」
「まぁね……」
「兄弟喧嘩とか、絶え間なかったんでしょ?」
「あぁ…いっつも家ん中は嵐状態…うるさい、うるさい」
修二は、幼なじみの豊になりすました。
仲田家の事なんか、語りたくもない、思い出したくもない。
過去の思い出なんか糞食らえだ…仲田家とは赤の他人…と言うよりも、もともと…俺には家なんかなかったのさ…修二は自分に言い聞かせ、生きてきた。