月子がエレベーターから出る。
修二がエレベーターに入った。
扉が閉まりかけた瞬間、また扉が開いた。
修二が開けたのだ。
このまま、閉まったまま…箱が下に移動していたならば…物語は始まらなかった。
魂が魂を…お互いに見つけた瞬間。
箱から出て来た修二が、月子の背中に声かけた。
「あっ、君、何処の店の子?」
月子が振り返る。
「えっ?…カトレアです」
「名前は?」
「…月子と言います」
「つきこ…そぅ…また、今度飲みに行くよ」
「あっ…はい…」
「じゃ……」
仲田修二と三山龍子が出会ってしまった。
さくらの花びら舞い落ちる中、この二人も…恋の崖から真っ逆さまに落ちて行った。
これから長い旅が始まる。