クラブカトレアは、7階立てのテナントビル、その5階にあった。
横に広くお洒落に造られたこのビルは…クラブ、ラウンジ、ホスト、バー、料理屋と、ありとあらゆる夜の店で埋まっていた。
このビルの前は、さくらの並木通りになっていて、さくら通りと呼ばれている。
時は4月…月光とネオンを浴びたさくらは、超満開。
月子は、下までお客を見送りに出て来た。
丁寧にお礼を言い、ほろ酔いの客は帰って行った。
月子はエレベーターに乗り込んだ。
他に人はいない。
もうすぐ閉店時間、今夜も指名客が一人来てくれた。
よかった、一人だけでも、ルミ子ママに顔向けが出来る。
何といっても、カトレアは高級クラブ。
ボトル入れなくったって、座っただけで3万円。
ボトルもピンからキリまであり、今日のお客は、7万円も使ってくれた。
まずまず一安心ね。
とエレベーターが5階で止まった。
扉の向こうに人の気配。
完全に開ききった時、月子は男と目が合った。
時間にするならば、3秒…箱の外と内…恋の崖っぷちに立たされた。