女は、窓外に目を移した。

男の目を見るのが、辛くて恐い。

が…黙ってはいられない、返事をしなくては…上手く誤魔化し逃げる事は、もう出来ない。

男に目線を戻した。

そこには、蛙を睨む蛇、女に飢えた男…とは遥かに遠い遠い、限りなく優しい余裕の瞳で…返事を待っている。

女は深く息を吸い…唾を飲み込んだ後、口を開いた。

「ごめんなさい……」

男は表情一つ変える事なく固まった。

後…先ほどより、いっそう優しい笑みを浮かべ答えた。

「…わかったよ…部屋まで送って行くよ…」

男は見事に振られた。

ポーカーフェイスの男の気持ちは奈落の底。

二人は、何処にでも存在する客とホステスの関係だった。

女の勤めるナイトクラブに通い約7ヶ月…飲み代、デート代、贈り物代…諸々合わせ、女に投資した額は、およそ3千万を軽く越えていた。

男27歳、女24歳…相思相愛…どちらも心から惹かれ合っていた。

が…肉体関係なしのプラトニックラブ……。

  では、なぜ?