月子が修二と密かに会っている事、兄は全く知らなかった。
新しい部屋の準備も整い、兄の家を出て行く最後の日、月子は皆と夕食を共にした。
兄は、月子の事がまだ心配で心配でならなかった。
何かとトラブルにぶつかりやすい龍子、それに…あのヤクザがまだ何処かで生きている、いっそのこと、原田に刺された時に死んでくれりゃぁいいものを……何故にまた生かされた?
修二の命が…兄には歯がゆくて仕方なかった。
「龍子、本当に大丈夫なんだな?」
「もう大丈夫よ、一人でも…」
「下請け会社の事務…断っても、本当にいいのか? 」
「うん、自分で仕事も探すから、心配しないで」
「そぅ言いながら、お前はいつも、俺に心配かけるんだ」
「ごめん…お兄ちゃん… 」
お兄ちゃん、本当にその通りね。
今もまた、お兄ちゃんが一番嫌な場所へと、私は向かっている。
この事実知った時、お兄ちゃんの受けるショック考えたら……胸が切り刻まれそう。
お兄ちゃん、龍子を許して……。
夕食が済んだ時、月子は兄を誘った。
「お兄ちゃん、我が儘言っていい?」
「?」
「そこの公園まで、散歩に付き合って」