ドアを開けた瞬間、ベッドの上で修二は座っていた。
目が合う二人……。
山下は、外からドアを静かに閉めた。
「よっ、月子」
修二は何事もなかったように、ニタッと微笑した。
月子には言葉がなかった、一歩、一歩…修二に近づき、横に置かれていた椅子に座った。
二人だけの世界…あの初めて抱き合った日から…修二の瞳見るのは久しぶりだった。
服役中の7年間は、再会した時にはほんの一瞬に思えたが、この数日間は、何十年も過ぎた様に、お互いが思った。
月子の目からクリスタルな雫が伝う。
何か言わなきゃ…そうだ、私は修二さんに謝りに来たのよ。
「修二さん、ごめんなさい…私のせいで、こんな事に…ごめんね」
「月子、謝んなよ。こっちが礼言いたいぐらいだよ、あのオヤジいなかったらさ、俺が弾かれてたじゃん、今頃、こうして生きて会えなかった、だろう?」
「でも…でもね、私…」
涙が溢れ流れ、止まらない…修二さんが曇って見えなくなった。
修二は月子の肩に手をかけ、顔を近づけた。
そして…流れ出る涙を、修二は唇で拭った。
修二の限りなく優しい唇が……月子のクリスタルな哀しみの粒を拭い取った。