事情調書から解放され、月子が部屋から出ると……そこに兄が立っていた。
「お兄ちゃん…」
兄は、力強い両手で月子を抱き締めた。
「お、お兄ちゃん、ごめん、ごめんなさい……」
兄の胸の中、声を出して泣く月子。
「何も言わなくていい。帰ろう、兄ちゃんの家に帰ろうな、龍子」
月子は兄の家に帰った。
兄嫁は、何時でもどんな時でも、月子に優しかった。
子供二人も同じく、思いやりのある子で、月子を心から慕っていた。
布団を敷いて貰い、早く寝るようにと言われたが、興奮状態の月子は、とても眠れそうになかった。
明日は原田のお通夜……月子は兄と二人で行く事になっていた。