月子は治療室へと入って行った。

皆、泣いている、息絶えた修二さんの周りで……。

月子の足は震えが止まらない、ガクガクとした足取りで一歩、一歩と近付いて行った。

修二さんの死んだ顔なんて見たくない。

だって、生きてるんだもん、死んでなんかないもん……。

その時また何人かの人が入って来て、月子は前にと押された。

顔が…息絶えた人の顔が……月子の瞳に映った、修二さんじゃない!

違う!違うじゃない!

でも、その死人の顔は…よく知った顔…この顔…知り過ぎた顔?

毎日見てた……お父さん?

油分は抜け…さらっとした肌になってるけど、少し青白くなってるけど…この眉は、この髪は、この鼻は、ここのホクロは…お父さんに間違いない。

「お父さんが!何で……」

その時、周りいた人間が…何人か月子を睨み付けた。

原田の家族だろう、月子と顔合わすのは、この時初めてだった。

「あんたかい?月子って女?」

原田の妻らしき女が、月子の前に来た。

「………」

月子は、言葉が出ない、動く事も出来ない。

意味が…意味がわからない。