月子は頭を抱え、廊下で蹲っていた。
とその時、集中治療室の扉が開き、医者と看護婦が出て来た。
周りは一瞬にして静まり返った。
医者の口元に視線が集まる。
「最善つくしましたが……」
と医者が首を横に振る。
何処からか、何処に居たのか、何人もの人間が、ばたばたと治療室に入って行った。
発狂にも近い泣き声が、院内に響き渡った。
月子は座り込んだまま、今、何が起きているのか把握出来ずに…ぼんやりとしている。
修二さんが…修二さんが死んだって……嘘よ、そんなの。
これって夢じゃない?
夢見てるのよね?
そうよ、私…もうすぐ夢から覚めるんだわ。
眠れそうにない筈だったのに、私…つい転た寝しちゃったんだ。
明日ね、修二さんと旅に出るの、波照間島…南十字星が輝く日本最南端の島なんだって。
横で寝てる原田が帰ったら、早く、旅の準備しなくちゃ……。
その時、誰かが月子の体を揺さぶった。
「さぁ早く…君も中に入って、顔、確認してくれるかな?」
と刑事は、月子を治療室に入る様にと促した。
月子は夢から覚め、我に帰った。
これは現実?
夢ではなかった……。