修二は、小学校時代…親友である、小林豊の家によく遊びに行くようになった。
豊は5人兄弟の長男、家は決して裕福ではなかったが、仲田家とは全く正反対、真冬でも暖かい温もりに満ちていた。
豊の家で、夕食をよばれる。
メニューは、肉抜きカレーライス。
俺んちは、ベジタリアンなんだ、と豊が笑う。
修二もお返しに笑い返す。
狭い六畳の間で、家族が卓袱台囲み、ワイワイガヤガヤ、スプーンがカチカチ。
やがて修二は、我が家に疑問を持ち始めた。
家政婦の作る込み入った料理を、会話もなく口に運ぶ。
家族皆の帰宅時間はバラバラで、全員が一緒に食卓囲むなんて、滅多になかった。
そぅ、仲田家の食事は、修二にとって、命を保つだけの儀式。
修二は、豊の家で食事するのが大好きだった。
と言うより、少しでも我が家族と顔を付き合わせたくなかった。
その重苦しい空気から逃げたかった。
朝早くから家を出て、朝食までよばれるようになった。
いつでも快く、豊の家は迎え入れてくれた。
ワカメだけが具の味噌汁ぶっかけ飯や、生卵かけ飯が、修二の淋しさを埋めていった。
仲田家…って、いったい何なんだよ。