仲田修二…仲田総合病院、院長の次男として生まれた。
修二には兄が一人いる。
長男は、次期院長が決められていた。
父、母、兄、修二、それぞれが、仲田家において単独で生きていた、と言っても過言ではない。
日常、家族的な会話は殆んどなく、いつも、その家には冷風が漂っていた。
父親は、苦労など全く知る由もない、親の病院を受け継ぐ為だけに生まれてきた、医学馬鹿だった。
その嫁である、修二の母も、これもまた苦労知らずのお嬢様。
見合い結婚をし、家事、子育ては家政婦に任せっきり、自分はと言えば、スポーツジムにゴルフ、買い物に旅行と、大忙しの日々を送っていた。
修二の兄は、幼い頃から取り分け優秀で、仲田家自慢の息子。
修二は……そぅ、予想通り、兄とは全く正反対、勉学よりも体を動かす方が好きだった。
自ずと、学校の成績なんかいい訳がない。
塾へ通わせても勝手にやめる。
家庭教師をつけても、遊びに行ったまま家に帰って来ない。
両親は、ほとほと手を焼いた。