月子は久しぶり、兄の家に行った。
兄の子供が中学進学していたのをすっかり忘れていた月子は、遅れて祝いを持って行った。
兄の顔を見るのは、数ヶ月振りの事。
「龍子、店はどうだ?」
「うん…それが、あんまりよくないんだ…」
「そうか…景気も悪くなってるからな、それより元気ないぞ、顔色も良くない」
「…もう、お店どうしようかなぁって、やめた方がいいかなって思ってるとこなの、実は……」
「はぁ…うん、そうか…状態はそこまできているのか…」
「私も30過ぎてるし…いつまでもこんな事してられないしね」
「原田さんは元気にしてるのか?」
「……うん、元気よ、あの人は……」
月子の表情に曇りが……。
「何かあったのか?」
「原田がね、奥さんと別れるとか言い出して、お兄ちゃん、どうしよう?私ね、私がね、あの人ともう別れたいのよ」
「……そうか、お兄ちゃんは初めから、良くは思ってなかったさ、でも龍子が自分で考え進んだ道だから…余計な口出しはしなかったけど、別れるならその方がいい。もういい歳なんだし、水商売なんぞまともな生き方ではない」