地獄が目の前に見えてきた……月子は思った。

嫌…嫌よ…地獄なんか行きたくない。

舟の進行を止めようと、月子は踏ん張る。

「お父さん、離婚何てしたら駄目よ、私は…お父さんの家庭まで壊したくないし、それに、この仕事しか…私は他に何も出来ないから、今の店やめる気なんてないからね!」

「……」

黙り込んだ原田は…何を思っているのか…。

月子は焦った…。

もう時間の問題ね、何とか原田の離婚、思い止める方法はないのか…わからない…そんな方法見つからないよ。

でも何とかしなくては、もうここのマンションも……店も……地獄に行くくらいなら、何もいらないよ。

原田とこれから死ぬまで一緒だなんて…死ぬより辛い。

修二さん……私の心を殺し……再び生き返らせた男。

あのまま、あなたに再会していなかったら、心が死んだ状態なら、私は、うどん屋の女将になっていたかも知れない。

でも、もう無理だわ。

生き返った心が…熱い想いを求めているの。