飲み屋街でふらふら歩いている龍子に、声をかけた女がいた。
ナイトクラブ カトレアのオーナー、中尾ルミ子だった。
ルミ子は、店のホステスにと龍子をスカウトした。
隠された肌の事など知る訳もなく、愛らしく均整とれた、男が好きになりそうな顔立ち、スラッとしたスタイル…カトレアに是非とも欲しいと思った。
「えぇっ?私がですか?」
無収入のまま、兄に、その嫁に、これ以上、迷惑はかけられない。
働かなくては、とずっと思っていた。
こんな私でも欲しがってくれるなら…雇ってくれるなら…。
龍子は、小さな光を見つけた。
1日体験の日…店にあるドレスを着用するように…と…ルミ子に言われた。
肩、腕、胸、背中…全部見えるじゃん…どのドレス手にとってみても…無理…着れる訳がなかった。
やっぱり無理なのね。
私の生きる場所なんて、もう何処にもないのかも知れない。
諦め、黙って帰りかけた龍子を、ルミ子が追いかけてきた。