クラブ「ムーンライト」は、以前カトレアがあった隣のビル、二階にあった。
ビルの前はさくら通り…今年も見事に開花した、満天の桃色景色…夜をバックにネオン浴びた儚く美しい小花達よ、今宵、思う存分に舞い踊れ~
月子が、二人連れの客と共に、エレベーターから出て来た。
「今日は、本当にありがとうございました」
深々と頭を下げる月子ママ。
「来週の週末、ママ頼んだよ、大事な客だからさ、いい子つけてよ」
「わかってますよ、是非お待ちしていますね」
「じゃ」
月子は、全ての客に対して、ビルの下まで見送りに降りて来た。
客が遠くに行くまで頭を下げている月子。
頭上げた瞬間に、月子が見たものは!
何処かで見た顔!
誰? 誰なの?
嘘でしょ?
修二さん…これは幻か……。
月子の真正面に修二の顔。
月子は、春に相応しい薄いさくら色の着物を着ていた。
ライトを浴びた超満開のさくらの下で、その景色に負けず劣らないさくら色の女、月子…。
修二と月子は見詰めあったまま、その場に立ち尽くした。
優しい風がやって来て、二人はピンクのシャワーを浴びる。