原田には、もう自由になる金など無くなった。

が……それを月子に知られる事を恐れた。

金の切れ目が縁の切れ目になる……原田は自分の容姿を自覚していたから、この言葉はいつも頭の隅に置いてきた。

これだけの金を投資してきた女、己れが借金するまでに至った女、今、月子に嫌われる事は、原田にとっては死ぬより辛い事だった。

なかなか金を出さなくなった原田に、イライラしながらも月子は考えた。

このままでは、我が城が壊れる。

「お父さんね、私、初心に戻って、もう一度店を巻き返すから、邪魔しないでほしいの。お金用意してくれないなら、私も経営に頑張らないといけないでしょ? もう店には来ないでよ。それでなくても、あのカウンターにいる男がママの旦那だって…何人もお客さん消えたのよ。お願いよ、店に来て、ああだこうだってもう言わないでくれる?」

「月子…そんな事言われても、俺は…お前が心配で、心配で…」

駄々をこねる原田。

「私を信用してないの?このまま、お父さんが店に来ていたら、お客さん潰されたら、もう店が駄目になっていく一方だわ。赤字も埋めてくれないくせに!」

原田は、渋々納得せざるをえなかった。