クラブ「カサブランカ」

大山組一行隊が、ホステス達に囲まれ酒池肉林。

修二は、数年振り飲む酒に、身も心も酔った。

兄貴幹部が修二に耳打ちした。

「修二、気に入る女いたら、俺に言え」

「………」

「今晩、抜くよう段取りするぞ」

「いえ……」

修二は、いらないと首を横に振った。

女か…おんなね…オンナかよ……俺にとっての異性は月子…一人だけ。

この近くに月子の店がある、が…まだ営業してるかどうかもわかんないや……。

営業していても、月子は果たしてまだいるのか……知りたい。

顔だけでも見たい。

俺は…もうお前に会わせる顔などないって事は、充分わかっているさ。

そっと陰から…様子だけでも窺えたら…。

アルコールの酔いが修二の背中を押す。

流れた歳月が甦る…美しく哀しいタイムスリップ。

  月子に会いたい。

宴を満喫した大山組は、カサブランカを出た。