修二は走った。
ボディーガードが追って来る。
予定外、シナリオには書いていなかった。
アドリブの世界。
相手が弾きを撃ってきた。
このままでは俺が殺される。
シナリオのラストシーンが、俺の倒れた姿なんて想像もしていなかった。
ヒューン~
弾丸が足元を掠めた。
最早これまでか…いいや諦めたらいけない!
とにかく走るんだ、逃げ切るんだ!
修二は子供の頃、運動会では必ずリレーの花形選手だった。
学年で一番…いつもアンカー選手で、どんなに遅れていようが、次々と追い抜き、1位のテープ切るのが修二の役目だった。
ゴールのそこに待っていたのは、歓喜に溢れた両親……そんな訳はない……ではなく、敷物の上に事務的、機械的な家政婦が二人。
料亭に特別注文で作らせた重箱弁当を、兄と一緒に無言で食べた。
修二の腕にまかれた一等の腕章が泣いていた。
俺に、走りで勝てる奴はそうざらにはいない。
逃げ切るんだ、修二!
この状況から逃げてやるんだ~
この先のゴールには……修二はその時、走りながら幻覚を見た。