月子は、自ら誘う事はせずに…でも心の中では、いつも修二の来店を待っていた。
指にしたリング…修二はまだ見ていない。
その日も、絵理子と待機していた時の事…ボーイが呼びに来た。
「月子さん、指名入りました」
月子が店内を見渡す。
その瞳に修二の姿。
「修二さん、来てくれたのね」
「月子、久し振りだな」
修二はかなり酒に酔っている様子だった。
「どうしたの?修二さん、今日は随分飲んでるの?」
「あぁ……」
「何かあったの?」
「いや、別に何でもないよ」
修二の様子がおかしい。
月子はわざと明るく振る舞う。
「会えて嬉しいわ、毎日来てくれてた時は、それが当たり前になっててね、でも今は、本当に、お店にこうして来てくれてる事……凄く感謝すべき事なんだって思うの。見て、見てこれ」
と月子は、指輪を見せた。
「ずっとはめてるんだ…修二さんだと思って…」
久し振りに会った月子のはしゃぎ振りに、修二はほんの一瞬だけ、全て忘れ幸せを感じた。
が…それも束の間…直ぐ様我に帰った。