修二の席に、慌てて月子がやって来た。

修二は片手上げ、明るい声で言う。

「よっ!」

「修二さん……」

言葉の出ない月子。

「待たしたな、待ってなかったか?」

月子は首を横に振り、目に涙が溢れてくる。

修二の存在が…月子にとっては最高の贈り物。

「修二さん、私、待たないで待ってたわ」

「そっか……」

修二は小さな紙袋を月子に差し出し、

「誕生日おめでとうよ」

「覚えてくれてたの……」

「忘れるもんか…」

それは…有名な宝石店の紙袋だった。

「何なの、これ?」

「家に帰ってから開けてくれ」

「ありがと…」

「ここは絵理ちゃんいるからさ、他の席回っといでよ。俺はもうすぐ帰る、まだ仕事残ってるし」

「でも……」

もう他の席なんて行きたくない。

修二さん以外、顔も見たくないし、 話もしたくない、誰もいらない、仕事なんか嫌だ、修二さんの側にいたいよ、だって今度いつ会えるかわからないじゃん……。

「早く行けよ、せっかく誕生日来てくれてんのにさ、俺は…月子の顔見れたから、もう充分だよ」

その時、二人を引き裂くボーイが月子を呼びに来た。