俺には時間がなくなってきた。
ゆっくり月子を鑑賞してる暇なんかもうないんだ。
一歩だけでも進まなければ……。
言え!修二、前に出ろ!
修二の見送りに…エレベーター内で月子と二人きりになった時……。
修二はドアを見たまま、月子に背を向けた状態で、
「月子…俺…柄にもない、初めて女に惚れたよ、お前に惚れてる……」
言った!よく言った!
月子は息を飲む。
もうぎりぎり限界…私にも言わせて……。
「私もよ…初めて会った日からずっとずっと…修二さん、あなたの事思ってきた……ずっと好きだったの…」
修二は振り返り月子を見た瞬間、エレベーターは一階に、ドアが開いた。
二人の蜜国は、はい、そこまで……。
箱の外には酔っ払いの男が二人、
「よっ、月ちゃん、わざわざ迎えに来てくれたのかよ~嬉しいねぇ~」
その二人は、カトレアの客だった。
出て行く修二とすれ違いに、箱の中に乗り込んで来る招かざる客。
修二は月子に手を上げ、
「じゃ、また」
と、去って行った。