これが済んだら今度こそ
両親が言う様に弁護士の
道に進もう‥


そしてジェニファーに
告白しよう‥。


《やり直せる。きっと‥》


そんな事を考えていた。


ルーレットが再び回り始めた。


エリオットは最初の
老紳士が元々持っていた
財産の額だけ賭けていた。


これで負けても老紳士に
損は無い。


負ける事は明らかだ。


ルーレットは最終のベルを
鳴らす‥


さっきよりも幾分か
気持ちは楽だった。


束の間の後、



カラン‥



また乾いた音で白いボールが
落ちた。


再び感嘆と溜め息が洩れる。


もう此処に居る意味は無い。


敗けだ‥。


エリオットは半ば背を向けて
背中でその音を聞いていた。


《何だろう‥?》


どよめきが聞こえる。


それはそうだ。
数千万ドルが一瞬にして
消え失せたのだから‥


エリオットは老紳士に
詫びようとした。


振り向くより早く老紳士の

ゴールドにオニキスの
嵌まった指環の手が
エリオットの肘を掴み
引き寄せた。


折角稼いだ金を減らされて
逆上して‥?


まさか!


命を賭けろと言うくらいだ!
あり得なくもない!


殺される!


エリオットは身を硬直させた。