エリオットは今、
自分の人生を悔いていた。


両親の言う通り、大人しく
弁護士の道を選んでいれば
良かった。

行く末はプレジデントの座が
待っていた筈だった。

いや、一流じゃなくても良い、
平凡な生活でも良い‥


何かデカイ夢を掴む‥

そんな漠然とした夢を
追いかけてこの街に
やって来た。


しかし、現実は甘くは
無かった。


何をやっても長続きせず

流れ流れてこの店に
辿り着いた。


ヤケになって酒に溺れ、

冷蔵庫にはオリーブの
瓶詰めと酔い醒ましの
ミネラルウォーターが
並んでいるだけ‥


《僕は転がる石だ!》


そのくせケビンの様な連中を
心の何処かで下げすんでいた。


これ迄、どんなに生活が
変わっても自分は
アッパークラスの人間だと
妙なプライドだけが
エリオットを支配していた。


《僕は敗者だ!
人生に負けたんだ!》


これが忌まわしい《13》
と言う数字の呪いなのか?

このまま何処かに葬り
去られるのか‥



カラン‥



乾いた音を立てて今、
盤上の白いボールが落ちた。


エリオットは無意識に
眼を閉じた。


辺りから感嘆と溜め息が
洩れる‥


ほんの一瞬の出来事が
とても長く感じられた。