老紳士はマフィアの様には
見えなかった。


『総てを賭ける‥

こんなスリルが他に
あるかね?

素晴らしい!』


そう言いながら老紳士は
目を輝かせながら盤上の
ルーレットを見詰めて
いる。


《全財産だって‥?

せいぜい負け続けて

持ち合わせの
200~300$って
ところだろ?》


エリオットは気休めに
小切手の額をチラリと見た。


其処に並ぶゼロの数が
益々、エリオットの意識を
遠退かせた。



狂っている‥



全財産はハッタリなどでは
無かった。


意識が遠退く‥


エリオットはなんとか
意識を保っているのが
精一杯だった。


何故だ?!
ピクリと動く事も出来ない!!


人は何らかの事故に遭遇
した時、これ迄の人生が

走馬灯の様に
スローモーションで脳裏に
展開されると言う。


エリオットは今、当に
ジェニファーの事を
思い出していた。