暫く押し問答を続けていたが
遂にエリオットが根負けし、
老紳士の賭けに応じる羽目に
なった。
『お客様、本当に
どうなっても知りませんよ‥』
老紳士はニンマリと笑い
早く数字を告げる様にと
エリオットの言葉を
急かした。
エリオットは大きく息を
吸い込んだ後、小さな声で
一つの数字を告げた。
『‥13‥。』
自分でも驚いた。
今日一日、散々エリオットを
悩ませ続けた数字が
あっさりと口をついて
出て来たのだ!
エリオットは慌てて
自分の口をピシャリと
塞いだ。
老紳士はその一言を
聞き逃さなかった。
迷わず、そして素早く
黒の13に小切手を切って
置く‥
エリオットは急いで
訂正しようとして手を
伸ばしかけたが、老紳士が
その手を止めた。
『こう言うものは最初の
インスピレーションが
大切じゃよ。』
しかし、不吉な数字だ!
しかもどんなに不吉だったか
既に思い知らされている。
《ええい!構うもんか!
どうにでもなれ!
無理に頼まれたんだ!》
同じ言い訳を再び繰り返し
心に溜まりかけている
タールの様に真っ黒で
どんよりと重たい気分を
拭い去ろうとした。