秦利が怪訝そうな顔をするのが
楽しいようだ。

秦利にしたら、自分のことを
見透かされているようで、
何だか居心地が悪い。

「ま、俺も似たようなモン
やしな」源丞は言った。


源丞の母親は未婚で、源丞を
産んだ。それも17歳の時に。

高校生の母親。それが彼女には
負担だったのだろう。

彼女は源丞を虐待した。
源丞が死ななかったのは、母の
弟のお蔭だった。

弟は姉を支え、源丞を助けた。
彼もまだ高校1年。2人は両親
がいなかった。

源丞が6歳の時。
精神的におかしくなっていた
母は源丞を殺そうとした。

再び助けてくれた叔父は姉を
刺してしまった。

「母親を追い込んだ張本人で
ある俺を……息子でも無い俺を
叔父さんは助けたんや。
俺が死んどったら、叔父さんは
たった1人の肉親を失わずに
済んだんや……」源丞は言った。

叔父は逮捕され、母親はどこか
へ消えた。源丞は施設に預けられ
常に1人だった。

母と叔父を狂わせた自分。
それを常に背負いこんでいた。

社会人になっても、人との
付き合いが下手で相手と距離を
置いてしまい、友達や仲間など
出来なかった。