想は久しぶりに祖父の家に
行った。央に言われたからだ。

「お爺ちゃん、ただいま」想は
淡々と言い、戸惑う祖父に笑い
かけた。

空回りなのは分かっている。
だが、こうするしかない。

「想!おかえり」祖父が言葉
を発する前に央が現れ、声を
かけてくれた為、良かった。

「ただいま、お兄ちゃん。
ヤバい暑いねぇ…さすがに…」
祖父に口を挟む隙を与えない
ように、話す想。

央は楽しそうに相づちを打ち
ながら、聞いている。

「想…お前もそろそろ、仕事の
ことを考えたらどうなんだ?」
祖父に言われ、想は首を傾げて
央と目を合わせた。

「うん…考えるかもね」想は
言い、央は笑っていた。


久しぶりに自分の部屋で想は
ベッドに寝転んだ。
大きな部屋に大きなベッド。
それ以外、何もない。

目を閉じると、一気に睡魔に
襲われた。

また、あの夢を見た。

曇り空の中、迷路の中で誰かに
追いかけられる夢。
いつも激しい頭痛を感じて、
目を覚ます。

今日もだった。また頭痛……
迷路の中で導くように聞こえる
声は誰の声だろう。

枕元に置いていた携帯で時間を
確認すると、額の汗を拭った。