その後、大学を卒業し、一緒に
暮らし始めた3人は拳の
知り合いの子供を預かること
になった。

それが想だった。

それぞれの夢を叶え、就職を
した最中、育児を兼ねるのは、
大変だったが、楽しかった。

全てが順調に見えた。
想の父親代わりとして、想の
成長が楽しく、辛い仕事でも
前向きに頑張れていた。

想の存在が生き甲斐だった。

しかし、全てが上手くいく訳
では無かった……

想を預かって数年が経過した頃
のことだった。
総二郎が解決した事件の犯人
が逆上し、想を誘拐した。

助けに行った3人に対し、犯人
は総二郎を殺す気だった。
総二郎を助けようとした優詩
が犯人と揉み合って、刺された。

「俺はあの時、医師として何も
出来なかった…」拳は言った。

優詩は想の頭を撫で、笑った。

『想は俺の娘や。
だから、泣くんやない……想は
強いんやろ?』静かに言うと、
優詩は目を閉じた。


刺された場所が場所であり、
拳の処置も虚しく、病院に着いた
ときには手遅れであった。

眠るように死んでいる優詩を
前にして、想は泣かなかった。