背中に汗が伝い、気持ち悪い。
エナメルのスポーツバッグが
太陽からの熱を吸収し、余計に
暑くなっている。

心はため息をつくと、人混みの
中に身を任せ、消えていった。

幼い頃、両親と暮らした街、
“西地区”

心の暮らす街は都市化が進んで
いるのに対し、西地区はそれ程
計画が進められていない様だ。

多くのビルが立つ風景は秦利
の住む“東地区”と似ている。

両親との思い出の場所……

「よぉ、兄ちゃん。ちょっと、
金貸してくれや」不意に肩を
引かれ、路地裏に引き込まれた。

ガラの悪そうな3人組。
心は臆することなく,男達を
睨みつけていた。

襟首を掴まれ,背中を壁に押し
付けられる。表情一つ変えない
心に苛立ち始めた男達……

「ナメとんのか?俺達を!」男
の掴む手が強くなる。

「あーこの糞暑いのに!!邪魔
やなぁ!」突然の声と共に男の
悲鳴が聞こえた。

心を掴む手が離れ,仲間の1人
が腕を捻りあげられ,表情を
歪めていた。

「っ…浅倉んとこのガキや…
行くで!!」