私は、その光景が信じられなかった。
近くに行って確かめたかった。
でも、腰が抜けて動けない。
「空…くん…?」
やっとの思いで出た一言。
周りの野次馬のせいできっと届いていない。
『おい大丈夫か!!』
空くんに呼びかけるおじさんの声で我にかえる。
その途端、なにかが解けたように溢れ出る涙。
一気に空くんのもとへ駆け寄る私。
野次馬はそんな私に驚き道をあける。
倒れている空くんを抱き抱えると、私の全身には、生暖かくて赤黒い血液がついた。
違うよ…
消えてなんて言ったけど…
こんなのを本気で望んだんじゃないの…
ねぇ…待ってよ。
空くん…嘘でしょ?
空くんは私を驚かせるのが得意だったもんね。
だからこれも、きっと私をびっくりさせるサプライしだよね?