窓辺の休憩スペースには、二脚のソファに挟まれてミニテーブルが一つ置かれてある。


 そのテーブルの下には、雑誌や新聞をしまえるようなちょっとしたスペースがあるのだ。

 ぱっと見ではとても目につく場所ではない。

 泉が風呂に入っている間にしまい込んだのだろう。

《今から千紗たちにメールすっかなぁ。くっそ、まに受けるバカがどこにいるっつーんだよ》

 男子生徒はそう心の中でごちると小さく舌打ちをした。

「どうした代谷。ここ、シワ寄ってるぞ」
「え? あ、ああ…」

 桐野の声に泉は顔を上げた。

 指先で触れて、なるほど、確かに二本深くへこんだ線が感じられる。

 おそらく、汚らしい言葉を聞いたからであろう。
 それと、意識を集中しすぎたせいだ。

 疲れた。肩が重い。バカってほんと嫌になる。
 泉は深くため息を落とした。

 ……はあ、さっさと寝たい。

 つーか今何時よ、と桐野たちの部屋の時計を見上げようとしたとき、

「……こ、ここじゃなかったみたいだね。代谷さん」

 泉の肩をキツツキの嘴のようにつつきながら、おどおどと佳乃が囁いた。くすぐったい。

 露骨にならないよう佳乃の手を離させながら「そうみたい」と泉は返した。

「じゃあ、もう用はないから帰ろうか―――」
「ああっと! 代谷さん、待って!」

 突然、かすれた低い声が遮った。

 殺意を覚えた瞬間だった。

 ったく……今度はいったいなんだ!?

 と、桐野なら言ってやるところだけれど、声が明らかに彼のそれではなかったので、めんどくさいなあと思いつつも仕方なく、駆けてくる男子生徒を待った。