しばらくして、
電車にも人がいなくなったころ。

屋根があるだけの
小屋のような無人駅にとまった。



「ここで降りよう。」



腐って緑がかった木の看板に

『鴨川駅』

とかいてある。




ユリがぼーっと立っているわきを、
さっきまでユリのお決まりの席に座っていた薄茶色のおじいさんが横切った。