2つ上の兄は
2,3年前に、
あるだけのお金と一緒に
姿を消した。
理由は何となくわかるが、
そのあとの生活は火の車だった。



モヤシは、
兄に対してみじんの愛もないのか、
心配しているようなそぶりも見せない。
それどころか
お金の事に文句ばっか吐いている。


本当に親なのか、
疑問でならない。




それに対して父はひたすら無口だ。






そんな家族だから、
皆で食卓を囲んだり、
テレビを見たり・・・

そんな普通の家族らしいことが
ある訳ないのである。





あの家は
自分が帰らなくったって
なにも起こりはしないだろう。



誰も心配しない。



むしろ食費が浮いて
家計も安定して
モヤシも喜ぶことだろう。





考えたらきりがなくて、

気付いたら
1駅乗り過ごしてしまった。



「どうせなら・・・」



ユリはまだしばらく
電車に揺られることにした。

もうこの際
どこまででも
行ってしまえばいい。


1つ2つ乗り過ごしただけなのに
窓の外には
知らない風景が続く。





不安にかられながら、
それでもユリは
もう帰る気はなかった。