【かおなしさま。】
誰かが呼んでいる。
【かおなしさま。わたしですよ】
おや……?
もしかして、おばあちゃん?
よかった、元気になったのだね。
【長いこと参りませんで、すみませんでしたねぇ、かおなしさま。】
いいえ、いいんですよ。
ところでおばあちゃん、ななちゃんは?
【ななですか?ななは、ちょっと出かけています。】
そうですか。
……おや?
どうして、わたしのこえが聞こえるのだろう?
【私も、姿無いモノになってしまいましたからねぇ…】
それは…
まさか、おばあちゃん、
おばあちゃん!
【でもお陰様で、やっとかおなしさまにお会いできた。
長い間お話しを聞いて下さった、御礼が申し上げられます。】
ひさのさん!
そんなことは良いんだ!
そんなことより、ななちゃんを…
ななちゃんを、守ってあげてください…!
【私には、もう出来ません。
それに、あの子はりっぱに、大きくなった。
もう、ひとりでも生きていけるでしょう。】
何を言うの、ひさのさん!
あなたは、おばあちゃんだよ。
おばあちゃんは、孫を守ってあげなきゃ!
おばあちゃん!
【もう、私の時間は終しまい。】
おばあちゃん…
【かおなしさま。私は貴方様のように、ずっとあの子を見守り続けることはできません。
ななを、どうか。
ななをどうか、これからも見守ってやってください。】