「いつも、あたし聞いてたから。あたしにはない感情的な音。励まされてる気がしてた。」

言葉になってるかわからないけど、

あたしはあのピアノの音が好きだって伝わったかな?

恐る恐る顔をあげた。


 目の前にいる彼はポリポリと頭をかいて照れたような顔でこっちを見てた。

「言えるじゃん。」

「えっ?」

「気持ち。」

「泣いてもいいよ。だけど、伝えることも必要だろ?」



響の言葉が胸をしめつけて

また、あたしの目から涙がでてきた。


「あっ・・り・・ありがとう。」



ただ・・伝えられない弱さも受け止めてほしかった。

苦しくて。

それでも、いつも

響のピアノの音に励まされてた。


頑張れと。

勇気をだしてって。






今なら、いえる気がするんだ。






「響くんのピアノの音ね、大好きなの。」

すぐ横にいた響に顔を向けて、あたしは言葉を伝えた。


背中をさすってくれていた手が止まって


あたしより真っ赤な顔をした君がいた。


「・・ピアノかよ。」

ぼそっと響の口から出た言葉は千秋に聞こえなかった。





END