愛美が部活に戻ったあと、いつものようにピアノの音色が中庭を挟んだ教室から聞こえてきた。

誰がひいてるのかは知らない。

それでもなぜだろう。

あたしはいつのまにか、この音色にひかれていた。

今のあたしにはこれが一番の癒しで落ち着く時間。　

初めて聞いたときの感動は今でもあたしの心をつかんで離さない。




力強く…でもどこか不安がよぎるような。優しい部分もあれば怒りに震え上がるようなひき方をする。


とても感情的であたしには足りない部分。


自分の小ささ…もろさをこの音色を聞くことで目の当たりにした気がした。

あたしの目には涙がいつのまにか溢れでていた。



その涙をふくこともなく、ただ…ただ頬につたる涙、耳に響き渡る音色を聞いていた。























ガラっ


教室の後ろのドアが急に開いた。


この時間に人がくるなんて今までなかったから


泣き顔のままドアに顔をむけてしまった。