言われるがままにおとなしく口を閉じると、手がほどかれた。



黒髪の男性「いい子です。窮屈かもしれませんが、少しだけ我慢してくださいね」



しばらくすると、雨脚とともに誰かの足音も聞こえてきた。



・・・ピチャリ


ピチャリ・・・



だんだん水を含んだ地面を踏む音がこちらに近付いてくる。


そして、その度に緊張感が増し震えまででてくる。



・・私が追われてるわけじゃない・・・・・だけど・・・恐い・・



震える紗季の頭に男性の手が触れた。



・・・??


男性は紗季の髪を励ますように優しく何度か撫でた。



すると、震えが少しづつ治まる。


直も近付く足音。




しかし、紗季には怯えが消えていた。



・・・不思議・・恐いはずなのに・・・こうされると、すごく安心する・・・・





足音は路地の前まできて、ちがう方向へと遠ざかっていった。



黒髪の男性「もう大丈夫で・・・」



男性が紗季から体を離した時だった。



ぐらりっ



男性の体が揺れ、紗季の方へと倒れこんだ。



紗季「えぇっ!?あのっ、ちょっと!大丈夫ですかっ!!!」



男性の体を支えながら、声をかけるが反応はない。


その変わりに息遣いが荒い上に、片腕を押さえているのがわかる。



この人、雨で濡れてるはずなのに肌が熱い・・・・・それにこの腕・・・・・



男性が押さえている腕にふれると、雨ではないヌルリとした感触がした。


黒髪の男性「・・っ!!




やっぱり、熱があるうえに怪我までしてる・・・


紗季「と、とにかく、救急車!!」


携帯をとろうと、体を動かした。