「馨…!!」
歪んだ視界と
歪んだ世界。
一瞬にして
走馬灯のように駆け巡る今までの記憶。
あぁ、俺は死ぬんだ
誰もがきっとそう思った。
俺が死んだら喜ぶ奴は何人もいる。
多分悪い行いばかりしてきた
神様からの俺への罰だろう。
夢にしか見ていなかった自分の死が
今現実に起ころうとしている。
怖く、なんかない。
俺は充分生きた。
人並みに沢山の思い出を記憶を積み上げてきた。
中学の部活だって
大嫌いだった勉強も
不器用過ぎて恋愛には不向きだった俺も
一番に友情を大事にしてきた俺には
なんの後悔もない。
正しい路を歩んできたと思っていた安易な考えが
俺を奈落の底へ引きずり込もうとしている。
間違っていた、なんて思いもしなかった。
何処で俺は選択を間違えたんだろうか…。
ガシャン、キキーッ
車が俺の脇腹を直撃し
ねじり込むかのように
俺へと突き刺さった。
体が悲鳴を上げ
歪んだ視界が一瞬にして
暗闇へと飲み込んでいった。