それから、俺は、生まれて初めて、南の目を真正面からのぞきこんだ。

なにも知らない雛鳥のように、ついばむだけのキスをする。

不意をつかれた南は、それでも少し驚いた顔をしていたが、関係ない。

「これで最後にしよう、南」

あの図書館での一件から、ずっと考えていた。

「お前は……自由に生きていい」

俺には、南を幸せにはできない。