少女が中に入るや否や部屋番がパタパタと外套や鞄、傘に寝袋をベッドの上に放り出していく。
どこから取り出したのか、サンドウィッチと紅茶のポットをサイドテーブルに置いた。二人分。

リジーは小さく首を傾げながら少女の後を追い部屋へ入る。
よく見るとベッドにはサンドウィッチ同様に二人分の荷物が用意されていた。

イヤな予感がする。


「お前に外套は要らんな。」
「いや、要らないけど…」
「ベストを用意してやろう。
おい、裁縫番を呼べ。そして30分で作らせろ。」
「30分は無理だから。というか、何でいきなり…」
「靴も必要か?長旅になるかも知れんしな、」
「え、何、ボクが行くのは決定事項?」
「当たり前だろう、私ヒトリで行かせる気か。」
「行かなければ良いんじゃない?」


リジーの言葉に呆れた様に息を吐く少女。
裁縫番がノックをして部屋へ入ってくると少女は手招きしてリジーを半ば無理矢理、裁縫番に引き渡した。


「退屈は自分から動かないと変化しないだろう。」
「不満なの、」


裁縫番は忙しなくリジーに巻き尺を巻き付ける。


「ああ、大いに不満だ。」


少女はまたニヤリと笑った。