今まで遠目でしか見る事の出来なかった先輩が、手の届く所にいる。


伸びた髪と、視力が落ちなのか細める目。今日は落ち着いた黒いロングコート。



「先輩」


誓った。


先輩と会っても、絶対に名前を呼ばない。呼んでしまえば再び燃え上がる。



「巴。先に行ってるね」


桃子は私を気遣って、秋穂と共に体育館へ向かう。


「行こうぜ。上野」


いきなり藤原が私の手を引っ張ったせいで、私は体勢を崩す。


ふと、視界に入った先輩の顔が動揺していた。


また鼓動が早くなる