「目が冴えとる」


ポソッと呟いたら、返事を返すように隣の部屋からイビキが聞こえた。


「若いくせにイビキ。無神経な奴め」

今ごろ、口を開けて爆睡している弟の姿を想像して笑いが込み上げる。


「無駄な一年を過ごしたんかな」


留学は急遽決まった。
行く気は無かったし、行くなら巴に全部伝えてから行く予定だった。

行く予定の生徒が事故に遭い、英会話の成績2番手の俺が代わりになった。


巴に言わなければと、何度も呼び出そうとしたが、変に緊張して伝えられなかった。


歯痒くて、情けなくて


伝えられないと分かって気付いた。



巴が大事なんだと