そう言ってほんの少しの寂しさを我慢しながら背を向けようとした。
その瞬間……。
尚はあたしの腕を掴んであたしを引き寄せると、優しく抱きしめた。
え?
あたし、尚に抱きしめられてる!?
「な……お?」
驚きのあまりにあたしの声は震える。
すると尚は一瞬抱きしめる力を強くするとすぐあたしを放した。
放されたあたしは口をポカンと開けながら尚の顔を見上げる。
尚は、俯いたまま何も言ってくれなかった。
「尚?」
そう名前を呼んでみると、尚はハッとしたようにあたしの顔を見下ろして優しく頭を撫でた。
「悪ぃ……じゃぁ、な」
そう言って尚はあたしからすぐ視線を逸らして背を向けて歩き出してしまった。
その姿を見ると何故か胸が締め付けられた。
……尚?