尚の優しさに触れて、切ない気持ちになった。
尚は誰にでも優しいんだよ。
自分が特別だなんて勘違いしちゃいけないんだ。
そう自覚しなきゃいけないって事にさらに切なくなる。
鼻がツーンとするのが分かる。
泣きそうになるのを我慢してあたしは尚の腕におでこを寄せた。
「ありがと」
「何回言ってんだよ」
そう言って尚はあたしのおでこを軽く叩いた。
「痛……」
痛がるあたしを見下ろしてフッと笑った尚は、遠くを見つめながら口を開いた。
「帰るぞ。送ってくから」
尚はブレザーを羽織って何歩か進んであたしの方に振り向いた。
その姿を見るだけで見惚れてしまう。
夕日のせいでオレンジ色に輝く綺麗な髪。
逸らせなくなる瞳は影で黒く見える。
……かっこいいな。
そう思いながらも、あたしは尚の後について屋上を出た。