「美麗ちゃん……か」
その声はとても澄んでいた。
何か……。
その声の低さが心地よくて。
その整った顔に見つめられて。
あたしの心臓はドキッとした。
すると、あたしの名前を言い返して彼はまたニコッと微笑むと、あたしを見下ろして言った。
「オレは宮藤渡里。渡里って呼んで。よろしくね?美麗ちゃん」
「よろしく……」
声が……。
どもっちゃった。
だって、あんな綺麗な顔に見つめられたら、誰だってこうなるでしょ!!
そう自分で言い訳した。
すると渡里君は、あたしの席の右隣に座った。
あ……。
隣の席なんだ。
そう思いながら渡里君を見ていると、渡里君はあたしの視線に気付いて首を傾げた。
ん?
そう言ってるように見えて、あたしは慌てて首を振った。
「あ、いや。何でもないです」
そう言うと、渡里君は“そっか”って笑った。